バレンタインから五日

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 僕、黙って姉の横顔見てた。  姉の机の上。姉と僕の小さい頃の写真。  二歳の姉が、赤ん坊の僕を一生懸命抱いている。姉は満面の笑み。小さい僕、大きく口を開けて泣いてる。  ずっと同じ写真が飾ってある。   「悠ちゃん」  姉は前向いたまま。  僕、じっと姉の横顔見る。  「部屋、別々にしようって思う」  なんて答えたらいいんだろう。     「大学入るし・・・  この大学で本当にいいのかってことはあるけど・・・」  僕に話してるのか、自分に言い聞かせてるのか、よく分からない。  「お父さんが子会社に出向なんて予想外だったし・・・  もちろんアルバイトするつもりだったけど、学費とか見ると・・・奨学金って結局、返さなきゃならないし・・・  ただ入るにしても辞退するにしても、部屋は別々にしようって・・・  一階の客間、わたしが使えないかって相談してる」  ずっと一緒の部屋だった。小学生の時は、ひとつの布団で寝た。  中学生からは別々になったけど・・・  姉ったら僕の前で平気で着替えなんかしてた。僕、部屋の外に出るようにしてた。  だけど別々の部屋にしようなんてならなかった。  姉弟でも女と男。早く別々の部屋になるべきだったかもしれない。  でも僕、言えなかった・・・     
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