「竹取の」第2夜<既朔>

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 二人とも学生時代は英語がそこそこ得意だったと以前から聞いていた。ただ、得意と言っても、他の教科に比べればという程度だったみたい。ただ、若い頃は海外旅行に何度も行っていたこともあって、日常会話とかには不自由しないらしい。子供の頃、旅行のアルバムを何度も見せられたのを思い出した。 「そう言えば、今日はどなたとゴルフなの?」  所在なさげにしているパパにママは助け船を出した様子。パパは新聞をテーブルに置いてにこやかに笑った。 「先日、うちの最高級車を買ってもらった作家さんだよ。浦城光太郎っていう」 「ああ、あの文豪さん?」  ママは喜んでみせた。そう言えば、今年の春に久しぶりに臨時収入が入ったからって、お小遣いを奮発してくれたっけ。その人のおかげだったんだ。 「そうそう。『教会の秘密は地下にある』で有名な」 「ミステリー作家だったっけ?」  わたしもその題名は聞いたことがある。確かわたしが子供の頃に映画化されたような気がする。 「そうそう。でも、ミステリー以外にもSFも沢山書いていて、古典文学をモチーフにしたものとか有名だよ。『源氏の君』とか、『竹取の翁の謎』とか」  竹取の…。また嫌なことを思い出した。 「ああ、『源氏の君』は読んだことあるわ。舞台が未来で、光源氏が主人公のお話だったわよね? でも、結構昔の作品じゃない? 浦城光太郎っていくつの人なの?」 「それが意外に若いんだよ。そうだな…俺より5つくらい上くらいかな」     
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