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わたしは頭に両手を当てて頭を振った。なにこれ、夢? 誰か夢だと言って!
「そうだね、順を追って説明しなきゃならないかな。ボクはアメツチノオオワカノミコ。今はこんな姿をしているけれど、ちょっと事情があってね、これは仮の姿。『竹取物語』は知ってるかい?いわゆるかぐや姫のお話なんだけど、そのかぐや姫をお迎えに上がった従者の子孫なんだ。つまり、現代風に言うと、月面人ってことになるかな」
「月面人…?」
わたしの脳みそはついにパンクした。オーバーフローっていうのか、両方の耳から脳髄がダラダラでまくっている感覚。竹取物語? かぐや姫? 英検のプレッシャーでついにわたしは頭がおかしくなったのかしら?
「そう、月面人。あそこから来たんだ」
そう言って、アメツチ…なんとかは、器用に前足を月に向けた。
「ちょっと、タンマ。ストップ。タイム、タイム。現在この電話は使われておりません。他の方に当たってください。本日の営業は終了いたしました。またのお越しをお待ちしておりません。さようなら」
わたしは、立ち上がって窓を閉めた。窓の外に鎮座しているアメツチは、悲しそうな目をこちらに向けたが、わたしは容赦なくカーテンを閉じた。
「寝よう…」
わたしは、ベッドに飛び込んだ。きっと、夢だ、これは夢なんだ。
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