親父へ

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「私達は息をして生きている。」 親父はいつも当たり前の事を言う。 「私達が吐き出した二酸化炭素を受け取って、植物達は私達に空気をお返ししてくれる。」 まさにその通りである。 「いいかい、私達はそうやって今まで生きてきたんだ。何かをもらったら何かをお返しする。この連続なんだよ。」 そんなことを繰り返し俺に語っていた親父が、昨晩亡くなった。 「私はもうお返しが出来ない身体になってしまったから逝くのだよ」 親父は最後までそんなことを言っていたが、俺はそうは思わない。 お人好しの親父はお返しし過ぎのせいで、苦労が祟って死んだのだ。 「なぁ親父。俺は親父になにを返せばいいんだろう?今この場でありがとうの一つでも言えばいいのか?」 何一つ親孝行をしてこなかった自分に後悔したが、そんなことをしても親父が生きかえるわけでもない。 俺は次の日、親父への感謝の気持ちを目一杯い込めた手紙を書き棺に入れた。 返事が来ることはないが、それで満足だった。 外に出ると天気は快晴、空はとても青かった。 俺は思いっきり息を吸い込み、二酸化炭素を植物達にお返ししてやった。 ~終わり~
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