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駅の近くのデニーズで、僕と理沙は暖かいお茶とパンケーキを食べさせてもらった。
そして、サヤカ先生は、教えてくれた。
母たちは、僕と理沙が公園からいなくなったことに、あるタイミングで気づいた。近くを見渡してもいない。不思議に思った僕の母が、一人で残っていた実夏に尋ねると、
「私が会いにいけば…って言っちゃったせい…かも」
と泣きながら言ったことで発覚した。
「そういえば……、さっき葉山町はどこだって聞かれた」
そう答えたのは美月姉ちゃん。
開きっぱなしだった引き出しから、サヤカ先生からの年賀状がなくなっており、自分の定期がないことにも気づいた。
消えた年賀状と定期。それは僕と理沙が電車で葉山に行ったのだと結びつけられた。
すぐさまサヤカ先生に連絡が行き、
「二人だけで新逗子駅に行ったかもしれない」
と聞き、半信半疑で自転車で駅まで駆けつけたところ、僕と理沙を見つけたのだった。
「本当に今日は驚いた……。もう、こんなことはしないでね」
サヤカ先生は、大きくため息をついた。
「だって、先生に会いたかったから」
僕がそう言うと、サヤカ先生は少しだけ目を細めた。「卒園式に出れなかったもんね」と言った。
「卒園式に出れなかったのは、悲しいけど……、オレ、先生とお別れできなかったのが……すごく嫌だった……。ちゃんと…さよならしたかった……。さよならを言いたかった……んだ……」
止まったはずの涙がまた溢れてきた。
サヤカ先生は口元を手で抑えた。目から涙が流れるのが見えた。
僕は、先生が泣くところを初めて見た。
「ありがとう。こんなこと言っちゃいけないんだけど……、来てくれて、嬉しかったよ」
隣に座っていた理沙が僕の手を強く握った。理沙も泣いていた。
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