7 years ago

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 マンションのエレベーターに乗り、僕と理沙は僕の家がある4階で降りた。  405号室の前に立ち、僕は理沙に 「ちょっと待ってて」  と言った。  セミロングの髪が舞うぐらいに理沙は大きく頷いた。  リビングに入ると、美月姉ちゃんがいた。  年の離れた中学生の姉は、テーブルに鏡を置いて、眉毛だかまつげだかをいじっていた。 「おかえり」  僕に視線を向けることなく美月姉ちゃんは言った。  僕もまた「ただいま」と言うと、姉には目もくれず、壁際の引き出しを開ける。  今年の年賀状を探すためだった。この引き出しにしまわれているはずだった。  サヤカ先生は、今年、年賀状をくれたはずだった。 「にいむら よう くん」  と宛名が書かれた年賀状を見つけ、その一枚を抜き出した。  「こだま さやか」  と書かれた差出人の横に書かれているのが「住所」であると言うことぐらいは敷いていた。ここにサヤカ先生は住んでいるのだ。  ひらがなで書かれたその住所を僕は頭の中で読み上げたが、 「かながわけん みうらぐん はやまちょう」  と書かれた場所がどこのことなのか僕にはわからなかった。横浜市でないことぐらいしかわからなかった。 「美月姉ちゃん」 「んー?」  相変わらず鏡に向かっている美月姉ちゃんに声をかけた。反応はしたものの僕の方へは振り向かなかった。 「葉山町ってどこにあるの?」 「葉山?」 「うん」 「夏休みに一色海岸行ったじゃん。あっちのほう。新逗子駅のほうが葉山」  僕は、去年の夏休みに家族で一色海岸にいったことを思い出した。 「そうなんだ」 「なんでそんなこと突然?」 「なんでもないよ」  僕はサヤカ先生の年賀状をコートのポケットにねじ込んで、「遊んでくる」とだけ告げて、玄関に向かった。  玄関に戻ると、置きっ放しだった美月姉ちゃんの定期を見つけた。僕はそれを拾うとその定期もポケットに入れた。  靴を履き「いってきまーす」と言った。  いつも僕が遊びに行く時のように。  美月姉ちゃんは「いってらー」とリビングから声をくれた。  いつも僕が遊びに行く時のように。  でも、今日は「いつも」とは違うのだけど。  僕は玄関の扉を開けた。
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