7 years ago

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 玄関前で待っていた理沙は、どこか不安そうに顔をしていた。 「先生ん家の場所わかったからさ、一緒に来る?」  僕が言うと、理沙は大きな目を見開いた。 「行く! 私も陽くんと一緒に行く!」  理沙の声に僕は頷き、マンションを出た。 *  当時の僕は、横浜駅にあるサッカークラブに通っていた。  そのため、よくJRは利用していたので、電車に乗ることになる不安はなかった。  しかし、理沙はあまり電車に乗ったことがなかったらしく、 「子供だけで乗って大丈夫なの……?」  と不安そうな表情を見せた。 「大丈夫。これがあれば乗れるよ。美月姉ちゃんのだけどね」  と、僕は理沙にPASMOを見せた。  そして、僕は理沙の手を引いたまま、改札機にPASMOを置く。ゲートが開き、僕はそのまま改札口を通る。理沙もその後ろに続いた。  駅のホームに着くと、電車はすぐにやってきた。  僕が電車に乗ると、理沙もすぐ後ろに続いた。 「すごいね、陽くん」  理沙が言った。 「なにが?」 「パパもママもいなくても、一人で横浜に行くことができるんだね」 「いつもサッカーで一人で電車乗るからなー」 「横浜まで一人で行ってるの? すごい!」 「オレ、大きくなったらJリーガーになるから。で、日本代表になって、ワールドカップだってでるんだ。だから強いクラブで練習するんだ」 「……『じぇいりーがー』ってなに?」 「え……」  理沙は日本のサッカープロリーグの名前を知らなかった。  サッカーにはプロがあることを話しているうちに、横浜に到着した。  僕は理沙の手を引いて電車を降りた。 平日の午後でも横浜駅は人が多かった。  ここまでは何の問題もなかった。しかし、ここからは夏休みの記憶だけが頼りだ。  一色海岸に行った時は、美月姉ちゃんに手を繋いでもらって、横浜駅で乗り換えたはずだった。  どの路線に乗り換えたのか、僕は目を閉じて思い返す。 「陽くん……」  理沙の不安そうな声で、僕は目を開ける。僕が道に迷っていると思ったのかもしれない。 「大丈夫。こっちだよ」  僕は夏休みに乗り換えた路線を思い出し、理沙の手を引いた。   
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