家業

2/2
前へ
/5ページ
次へ
そして僕が中学生になる頃お爺ちゃんは一度病気で倒れた。 あまり、重症ではなかったみたいだが、その日を境にお爺ちゃんはおかしくなっていった。 物忘れやボーッとしてる事が多くなったのだ。 ボーッとしてるからっておかしくなってると感じるのは、なんかお爺ちゃんを馬鹿にしてるみたいで嫌な気分にもなったが、たまに肩を揉んであげたりしても会話をしなくなったりして、違和感を覚えた事がきっかけであった。 僕はその日を境にあまりお爺ちゃんと会話をしなくなってしまった。 部活であったり、友達と遊びに行く機会が増えたりして何かと言い訳を付けてお爺ちゃんの所に行かなくなった。 今、その時を思うと後悔しかない。 何故、あの時もっと会話をしておかなかったのか、過去に戻れるならもう一度あの日を過ごしたい・・・ それからというもの僕は、部活が本格的に忙しくなり、土日は練習、平日は馬鹿だったせいか塾に行き夜帰って来るのが遅くなっていた。 ある日、またお爺ちゃんが倒れた。家族からの連絡が僕を病院に走らせた。 脳梗塞・・・今回のは一撃が大きかった。 一命は取り留めたものの、もう元気だった頃のお爺ちゃんの面影はなくなっていた。 お見舞いに行った時、少し話せるお爺ちゃんは、僕の顔を見て誰か知らない人を見るような顔で見つめてきた。その時は僕だと認識していたか分からないが、その時の顔は今でも脳裏に焼き付いている。 それから少しして退院して、家に帰って来た。 介護の人に支えられて、帰ってきた。 二階のベランダで見ていた僕は誰にも見られないように泣いていた。その場でうずくまり、頭を抱えてあの日の事を後悔して泣いていた。 もっと何かできたんじゃないか、その一瞬で今まで感じた事がないくらいの恐怖感を感じた。 少し前まで元気に仕事をしてた人が、急に体が不自由になる・・・ 人間って脆いんだなと感じ、今までした事なかったが神様に願った。 お願いします。もう一度だけもう一度だけあの日を返して欲しいと・・・
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加