紫紺の山

11/29
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「そうか…」 テツは手に持ったぼた餅を口に無理矢理放り込み、手に持った竹筒の水で流し込んだ。 そして立ち上がった。 「ばってん、俺は比布男たい。佐奈を…比布女を山に連れて行く事しか出来んったい。それに…」 菊枝と琴乃の視線が刺さる。 「それに、比布女は生贄やなかとよ。山の恵みで生かされている人間から神様へのお返したい」 テツは尻についた枯草を手で払った。 「そうやって村の人間たちは生き延びる事が出来るったい。俺も、お前たちも…」 木の傍に立てかけた野菜の入った籠を背負う。 「お前たちのした事は生きるための事たいね。佐奈も恨んどらんやろうけん…」 テツはゆっくりと歩き出した。
/29ページ

最初のコメントを投稿しよう!