紫紺の山

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三造はしっかりと刃の砥がれた鉈をテツに渡した。 その鉈は腰に下げる事が出来る様に猪の皮で作られた鞘に挿してあった。 「重たかったい…。こげな大きな鉈、何に使うとね…」 腰に鞘を結びつける三造に文句を言う。 三造はニヤリと笑ってテツを見上げた。 「必要になる時が来るったい。文句ば言わんと持っとけ…」 「ただでさえ佐奈ば背負って山に入るとに…。身軽な方が良かろうもん…」 テツは三造が結わえた鞘を外して囲炉裏の傍に座った。 「刃の砥ぎ方は鎌と同じたい。しっかり覚えとけよ…」 三造はそう言うと囲炉裏に下げた鍋に野菜を放り込んだ。
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