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静寂で漆黒の何も映すことがないはずの世界で、白銀のロボットのようなものが立ち上がる。
陶器のような白く艶やかな肌に、髪の毛、眉毛、まつげ、ライトの点る目、鼻、口など細部に渡り人と変わらない容姿を持ち合わせ、8頭身の美しく鍛え抜かれた男性の体に豪華な鎧を身にまとい。
その背には光を灯すかのように暗闇によくはえる真っ白な二つの翼をはやし、その手には管楽器であるフルートが握られていた。
黒一色のその場を、スポットライトを浴びているみたいに眩しく照らし、 ロボットのようなものが、パール色に輝いていた。
少しの間、立ち尽くしていたそのロボットのようなものが急に動き出した。
仮面のように繊細な模様で編み込まれたマスクが光輝き消えると口元が露になった。
持っていたフルートをその口まで持っていき当てる。
フルートをロボットのようなものが構えたのと同時に、歌声が何処から聞こえてきた。
それに合わせてフルートで、曲を奏で始めた。
演奏が始まると、不意に空と思われる頭上から、光で出来た花弁が舞い落ちてきた。
何処なのか何があるのか見えない世界に、いくつもの花弁が舞い降りて光が注がれていく。
ロボットのようなものの足元にはまだ暗闇が広がっていたが、その光を受け止めてか、わずかに光を取り戻して、明け方の空のごとし、しらみががかった。
僅か数秒の演奏なのに、生涯忘れられないと誓えるほどの感動が押し寄せて圧倒させられるその音楽の力…。
ロボットのようなものは演奏を終えて、降り注ぐ花弁を見上げる。
すると、凛とした女性の声が響き渡った。
「去らば、悲しみの大地」「私は新たな翼を手にいれた」「夜明けを待つ暗闇を飛び立ち。まだ、見たことがない希望の空へーー」
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