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通行の邪魔になっていたのかと思い、頭を下げて横に動いたヒカル。避けすぎて、歩道から段差のある車道へ右足が落ちてしまいそうになった。
ーーーやだ、まって!! 落ちるっ!
背中から倒れかけたヒカルの二ノ腕をがっしりと掴んだ男。
次の瞬間には、引き寄せられてヒカルは男の胸に突進していた。
突進したままヒカルは男を恐る恐る見上げると、やけに近い距離に男の端正な顔があった。
ーーーうわ! ちかっ!
「すっすいません。いえ、あの、も! 申し訳ございません!」
すぐに離れてヒカルは、ぺこぺこと男に頭を下げた。
ーーーまた、朝からドジしちゃったよ! 一体私のドジは、いつ治るんだろう。
いつものように自己嫌悪の波に飲み込まれていき暗くなるヒカル。
「……あんた、ここの人?」
店を顎でしゃくる男。
「はあ……いえ、はい、何かご用でしょうか?」
男は、ヒカルの胸バッチを見ながら
「小日向ヒカル……」と読み上げた。
ーーーまたまた大変! お客様かな? だとしたら、店長でもよばないといけないよね。
「はい、あの……営業のものを、店長の方がよろしいでしょうか? お呼びしますか?」
「いや、あんたでいいよ。小日向……ヒカルさん」
ニヤって笑った男の顔を見て、ヒカルは何故かわからないが背筋に悪寒が走るくらい嫌な予感がしていた。
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