闇しぐれ

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闇しぐれ

       しまった、と思った。  遅くなった帰り道。  小道に折れ込んで近道を試みたのがいけなかった。  一本道の向こう、数人の男が歩んでくるのを、おしずは見とめた。  聞こえてくる談笑の大声は、酒に泥酔している声そのものであり。    (どないしようか)  ひとつ前の小路まで引き返すにはだいぶ戻らなくてはいけない。  だがあんな酒酔い輩にからまれてはたまらない。    (ええわ。引き返そう)  そう決めて、踵を返した時、背後から大声が鳴った。    「そこの女、待て!!」  おしずは舌打して、急ぎ走り出した。  この状況で、待てと言われて待つ阿呆がいるわけがない。    「待てと言うとるだろう!!」  西国なまりの大声が小道いっぱいにわななき、追って来る数人の足音が汚く響き。  おしずは懸命に駆けたが、男の足は酔いにあっても速く。あれよこれよといううちに追いつかれてしまった。  腕を掴まれて、顔を背けるおしずを、  「何故逃げた?え?」  嘲笑が包んだ。  酒臭い息がかかり、おしずは眉をひそめた。    「べつに。急いでて、道を引き返しただけや」  「ほう、悪いが少し時間をくれないかね」       
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