お返し地獄

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念願のマイホームを手に入れ、新しい土地で新しい人生を歩き出そう。
まだ芝生が綺麗に生えそろっていない庭に立って大きく深呼吸をする。

私が結婚したのは3ヶ月前。相手は子持ちバツイチ、それでも連れ子との関係をゆっくり築きながら結婚に至った。今では普通の一般的な仲良し3人家族。
この前越してきたばかりの新しい家の匂いが3人で囲む食卓の朝食をさらに幸せな味に変える。

「いってきま～す！」
元気な2人の声がじゃれあって会社と小学校へ向かう。

「行ってらっしゃい！」

旦那と子供を送り出し洗濯物に取り掛かろうとしていた時、玄関のベルが鳴る。
「ピーンポーン」
朝早いのに、誰だろう、、、と思いながら無造作に首の後ろで束ねた髪をほどいて手ぐしでとかしながらインターホンの画面を見ると、お隣の黒川さんが優しい笑顔で立っている。
「はーい」
玄関を開け外に出ると、黒川さんがレーズンパイを差し出す。
「この前引越しのご挨拶に来て頂いたから、そのお返し。焼き立てだからぜひ」
そういうと、忙しい時間にごめんなさいねーと言って、また優しい笑顔で去って行ってしまった。
「あっ、ありがとうございま～す」
と急いで言ったが黒川さんの耳には届いたのだろうか、、
まっ、いいか、美味しそう。

急いで洗濯物を片付けてコーヒーを入れソファーに座りレーズンパイを頬張る。

うまっ。

料理とか上手そうだもんな～
いつも綺麗で笑顔で、
よかった～お隣さんがいい人で。