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ダックスフントパイロキネシス
僕は東武大学に通っているが、眠くて講義をサボった。図書館のソファでPSPで『みんゴル』をやっていた。ガムをクチャクチャ噛んだ。
どっかの学部の女子どもがペチャクチャしゃべっている。どうせ、僕の悪口だ。僕の顔はプラスチック加工だ。目玉は左が緑色だ。
明日はムカつく面接だ。これで10社目だ。どうせまたダメだ。この前受けた後白河産業の面接官を殺したくて仕方がない。
『アナタの趣味はなんですか?』
『旅行です』
『就職してからも旅行されては困るんですが』
次の言葉が出ずしどろもどろだった。
あれ以来、旅行に出るのに抵抗がある。明日は土曜日だ。友人の磯谷竜、井川潤と千葉に出かけるはずだったが、キャンセルして面接をすることにした。
九尾株式会社って食品会社だ。
埼玉県にある九尾市にある。企業城下町だ。面接官は吉永小百合を彷彿とさせる相島亮平って女だ。
「おはようございます」
相島が言った。
「おはようございます」
「アナタは誰ですか?」
履歴書送っただろ!?大丈夫か、この女。
「源昌之って言います」
「義経の末裔ですか?」
「ハイ、よく分かりましたね?」
「母べえ見ました?」
「やっぱり意識されてるんですか?あの映画には興味はないです」
「まあ、趣味は何ですか?」
どうせ、落ちるんだ。
「人を殺すシーンを想像することです」
「まぁ、素敵この会社にピッタリね?」
相島がホルスターから拳銃を抜いて僕に向けた。
「何をするんですか!?」
「明日までに犬三匹ぶっ殺してこい!それが採用試験だ」
相島から日本刀を受け取った。
「犬ってのは警官ですか?そんなことしたら死刑に……」
「ホンモノの犬だ。ウチは犬の肉や内臓でハムとかウィンナー作ってるんだ」
隣の家はダックスフントを飼ってる留守を狙って刺し殺した。ドッグフードをやったら懐いてきたから簡単だった。
坂道でダックスフントを見つけた。石ころを投げつけ動きを鈍らせて斬り殺した。
川べりで7歳くらいのガキがいたから川に突き落として、ダックスフントを刺し殺した。
犬の死骸をキャリーバッグに積めて九尾食品に持っていった。
「やりゃあ出来るじゃねぇか?採用だ」
相島に褒められて嬉しかった。
親父やオフクロも喜ぶだろう。
僕はパイロキネシスを覚えた。
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