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(続) 霞み夜
(わけが分からぬ)
沖田は胸中、吐き捨てた。
妙な女だとは思っていたが、ここまで理解不能だとは。
訪れた際は迷惑そうな様子など無かったはずだ。食べてゆくかとも聞いてきたではないか。何か彼女の心に傷をつけるような事でも己は言っただろうか。
来るなというのだから、行くわけにもいくまい。だが、おしずは未だ仕事も一日目で、せめて順調になるまでは見届けたいものだと。今なお思う。
(何故)
沖田は自問する。
乗りかけた船だからか。
おしずの面倒をみ始めた、それを最後まで済ませたい責任感か。
もう会わぬと決めれば、事は簡単だ。
(だが)
この胸底で疼くような濁流は何だと。
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