家族の想い愛…!なんちゃって。

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作り出す人がここにいないとなると、頼るべき人を見つけださなくてはいけなくなる。 今の私には人との繋がりは一切なく、はてどうしたものかと、その本のページを眺めているとカリントゥ村長がそっと呟くように語り出す。 「実はのう、マンシュの父……わしの息子も同じようにキナの病気を治すべく、神に頼み他の世界へと渡り歩いたのじゃ。じゃが、この村へ帰って来ることはなかった。この本だけ遺して、逝ってしまったのじゃよ」 「そうだったんですね……」 「他の世界へと渡る時、リカ殿の働く会社に世話になったのじゃ。理に反する行為だというのに、神々を通じて特別な許可を貰ってのう……貴方達には感謝し切れぬ」 だからキサギのことも知っていたということか。 会社を通して、ということは結構大掛かりな事をしたんだろうな。 それでも成し遂げたかったことが、成し遂げられなかったその後悔がカリントゥ村長の声に滲んでいた。 「わしは……もう失いたくないんじゃ。大切な家族を。マンシュにはキナの病気は不治の病と言い張ってしまえば、息子のように命を落とす事も無い。わしもキナが病気と戦っている姿を見るのは辛い、じゃが……こうする方法しか思いつかないったのじゃよ、許しておくれ」 誰も悪くないのに、大切な人を守るための行動をしているだけなのに、行動を取っている人が不幸になっていく。 そんなの絶対におかしい。 この負の連鎖をここで断ち切らなければいけないんだ。 「なんだ村長。そんなに悩んでたんじゃないか、相談してくれれば良かったのに」 はっと振り返れば、入口に背中を預けて立つキサギがそこにいた。
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