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こうして一段落した事件は、変な噂も立つこともなく静かに落ち着いていった。
ブレイヤー村の特産品というカシカの実も、会社にたくさん届けられ今では会社の建物内はその香りでいっぱいだ。
パイナップル位の大きさのオレンジ色の実は、一つ試食したらその味は洋梨のような味に近いものだった。
早速街の一角で、カシカの実を売り始めると美味しいという評判から瞬く間に売れていき、材料を揃えるための金額にあっという間に届いてしまった。
「順調だね!」
「本当にな。後はポーション作りに力を入れよう」
集めた資金でポーションの材料となる物を買い揃え、会社へと戻りながらキサギのその言葉に私は肩に力を入れた。
「私、ちゃんと作れるかなあ……」
「アルバルトさんに聞いたら何でも倒せる物凄い魔力はないけど、ポーションを作れる魔力はあるって」
「キサギも一緒やろうよ」
「そうしたい気持ちは山々だけど、俺は魔力を持ってないに等しいんだ。父が転生者だからといってもそれは受け継いでないみたいでさ」
「そっかあ……」
なんかあまり聞いてはいけないような話題な気がして、私が自信を無くしてどうする!と自分を叱咤し買った材料を見つめた。
これで私はちゃんとキナちゃんの病気を治すための、ポーションを作るんだ。
作る前に失敗する未来を考えてどうするっていうのだ。
作るための努力をみんながしてくれているんだから、私はみんなの努力を無駄にしちゃいけない。
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