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窓は開いてないはずなのに、小さな風がふわっと自分の周りで吹き小さな綺麗な音色が響く。
指先に微かな熱を感じて、そのまま集中力をそこに注ぎ込んだ。
皆の笑った笑顔、そして幸せな時間を想像して自分の思いを込めてみる。
陽だまりの匂いがふわっと香ったと思った次の瞬間、何かが生み出された感覚が全身を伝った。
はっと目を開ければ、朝日の光を摘み取ったかのような綺麗な結晶が手のひらの中にあった。
「できた……」
今まで何度も何度も失敗した魔力の結晶化が、今この瞬間出来上がったのだ。
勢いよく立ち上がり、私は慌てて中庭へと走り出した。
いきなり席を立った私に、コテツも何事かと私の後を追ってきた。
「ど、どうしたニャ?!」
「出来たの!結晶が……!」
自慢したい気持ちもあるけれど、私はそれよりも先にポーションの完成をさせたい気持ちの方が強かった。
渡り廊下を一気に走り抜け、中庭へと続く扉に飛び込むような形で私は扉を開けた。
そして先程失敗したものを綺麗に片付けて、新しいポーション作りのための準備を行う。
薬草の調合に関しては、街の薬屋の店主にも形は何とか認めてもらえるようにはなっていたため、手際よく作れるようになった。
早く作りたい気持ちを押さえ込み、丁寧にそして皆の想いを込めるようにしてそっと混ぜ合わせる。
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