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「相変わらずお前さんは、俺にぶつかるなあ」
「す、すみません!」
「気にするな!さあて。じゃあ、行くから気合い入れろよ」
「気合いって一体、なんーー」
なんでですか?と続ける前に、目の前に広がるその光景にまたしても私は体のバランスを崩しかける。
大きな翼にキラキラと光輝く鱗、そして大きな胴体は芝生のこの空間に影を落とす。
アルバルトさんの部屋の窓でも見た経験はあったが、こんな近くで見ることになるとは思いもしなかった。
「移動時間は短くした方がいいだろ?馬なんかよりもうんと早く着く」
「ヴェルギールさん……まさか、その……その子に乗って行くとか言いませんよね?」
「なあ〜に、当たり前の事を聞くんだよ。乗り心地最高なんだからな?ほら、さっさと乗った!」
まさかまさかまさか……ドラゴンに乗っていくなんて想像もしていなかった。
ごくりと唾を飲み、ベルカさんの顔を見ると笑顔でお見送りする準備万端だ。
恐る恐るそのドラゴンに近づいていくと、耀く瞳が私を捉えた。
「うっ」
「紹介するぜ。俺の相棒のヒューダだ。賢くて良い奴だから安心しろ」
「よろしくお願いします、ヒューダ」
ドラゴンのヒューダにそう頭を下げると、ヒューダの瞳が少しだけ細くなった。
ゆっくりと頭を地面に下ろし、乗りやすい体勢を整えてくれるとヴェルギールさんに手を引かれるがままヒューダの上へと乗った。
鞍に跨りポーションの入った鞄を大事に抱えながらも、落ちないようにと言われるがままヴェルギールさんの腰に手を回した。
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