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そっと吹き抜けてきた風に乗って、知らないでも優しい声が聞こえた。
『娘をーー家族を救ってくれてありがとう』
そうハッキリと聞こえたけれど、その人の姿は見当たらなかった。
でもその声の主は分かっていた、だって私を成功へと導いてくれた人だから。
あなたのお陰で、私はこの三人の笑顔を見ることができた。
こちらこそ本当にありがとうございました、そう感謝の気持ちを込めながら一つ瞬いた。
こうして、全てがまとまったこの事件は幸せを閉じ込めるようにして幕を閉じた。
神木を下りる時はキサギにおぶられながら、急降下して無事地面へと戻ってこれた。
体力は使わなくてもいいけれど、これは生きた心地がしないから次からは自分の足でしっかり下りようと心に決めた。
帰る支度を終えて、キサギが会社へと戻るための転移魔法の準備を整えた。
「リカお姉ちゃん。お薬を作ってくれてありがとう」
「何と感謝していいのか、わしは、わしはっ!!あああ!!」
「大袈裟ですよ、カリントゥ村長!お礼なんていりません。私みんなの笑顔が見れただけで、すごく幸せですから」
カリントゥ村長は私に泣きながら感謝の言葉を永遠と唱えてくるその勢いに、私は対応に困りつつも笑顔を向けた。
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