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部屋を出ると真っ赤な絨毯が引かれたゆったりとした廊下が続き、私は光を取り入れる窓の外を見て思わず息を飲んだ。
窓に近寄りその光景を視界に取り入れるものの、頭が処理しきれずにただ眺めることしかできない。
先程と同じように雲が建物の下をゆったりと行き交い、はるか遠い地上の緑と海の色であろう青が滲むように混じり合いながら色を広げていた。
ここは一体どこなのだろうかと、考えるよりも先にアルバルトさんが私に話しかけてきた。
「この景色は我社の自慢と言っていいものなんだよ。綺麗だろう?」
「は、はい」
「ここよりも奥の方が更にいい景色が広がっているんだ、着いてきてくれ」
先に歩き出したアルバルトさんの後を追いながら、私は辺りを見渡しては驚くばかり。
壁にかけられている絵画は一人でに動いているし、天井から吊り下げられたライトに座る、妖精に似た何かが手を振ってくる。
非現実的なことだらけで、驚きを通り越して冷静に見ていられた。
真っ直ぐな廊下を右に曲がり少し歩くと、先を歩いていたアルバルトさんが足を止めて壁に手を当てた。
すると勝手に真っ白な壁から扉が浮かび上がり、ドアノブに手を掛けて中へ入るようにと促される。
恐る恐るその中へと入ると、華美なソファが二つテーブルを囲むようにして置かれていた。
暖炉の上にはまたしても絵画が置かれ、綺麗な女性が私を見て微笑んだ。
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