本日、死にました。

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しかしアルバルトさんは首を横に振って、私の考えを否定した。 「この世界で生きる者全ては確かに神が生み出したもの。でもその者に宿る魔力は決して神が自由に扱えるものではないんだ。水や木などの自然から、そこに棲む精霊や人間……その者達がどう生きて行くかは自分達で決めていくこと、だから神は決してそれに関与することはない」 「それじゃあ神様はただ見ているだけ、ということですか?」 「全てを見て、判断し新たなる人材を与える。それで世界が変わっていくかはそこに生きとし生けるもの次第ということだ」 絶対的存在である神様でも、もし人間が滅びゆく未来を選んでしまったらそれまで……ということになるのだろうか。 そういう運命にならないよう、この世界はその者が持つ運命の糸を絡ませながら、強く強く一つに束ねていっているのかもしれない。 そして、目の前にいるアルバルトさんという存在は複雑なこの世界を神と共に支えている。 「そんな世界をより良くしていくためにも、私達はここで働いている。どこまでも地域密着型の組織と言えるだろう」 地域密着型という言葉に、私は胸を打たれた。 元々務めたいと思って採用試験に向かっていたあの企業も、地域密着型で地域との関わりを大事にしていた。 あるプロジェクトの説明を受けた時のあのワクワクした感情と同じ感情が私を包んだ。 どうしたらこの会社のためになるだとか、より良い地域にしていくだとか、そう言った広い視野を持てるような社会人になりたい。 頭が言い訳でもないけれど、私が自分の力で自分を磨き上げていけるようなそんな場所を探し求めていた。 新しい世界で自分を磨く、その方法は一つも思いつかない。 なら、この恵まれたチャンスを掴むべきだとそう思った。
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