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そんな私にキサギは安心してとでも言うように私を庇うようにして前に出た。
「そんなに警戒するな。俺が誰かと分かっててやってるんじゃないよな?」
「なに?では名を名乗れ」
「キサギ。キサギ・クドウだ」
キサギがそう名乗ると槍を構えていたゴブリン族達は、血相を変えて槍を下ろした。
そしてその場で片膝を付いて、頭まで下げた。
なんだろうか、この舞台のワンシーンでもありそうな場面は。
キョトンとしながら、態度を変えたゴブリン族を見つめていると髭を蓄え杖をつきながら一人のゴブリン族の人が近づいてきた。
「何の騒ぎかと思えば、久しぶりじゃのうキサギ殿」
「村長も元気そうで何よりだよ」
「ふぉっふぉっ。言われる程まだわしも老いぼれてはないぞう」
キサギとのやり取りを見て、2人は親しい間柄にあることは明白だ。
どうやら先程槍を構えていた人達が何か勘違いしていただけのようで、ほっと胸を撫で下ろす。
怖かった……こんな所で槍に突かれて怪我をしました、なんて事起こって欲しくない。
キサギが村長と呼ぶその老人が、下がって良いと声をかけると槍を構えてきた人達はすぐさま移動していく。
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