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確かに悪い行いをしていたマンシュくんだけど、自分が怒られてもなお何かを守りたかったのかもしれない。
見たまま、感じたままの言葉を口にしてしまった私がこの場で1番悪い。
「すまんのう、リカ殿」
「いえ……こちらこそ、穏便に話を進めていくのが妥当だというのに、私の感情のまま言葉にしてしまってすみませんでした……」
「そう深く謝らないでくれんかのう。元々はわしが悪いんじゃ。あの子が何かコソコソと行っていることには気づいてはいたんじゃが……ちゃんと話を聞いてやらなかったわしの責任じゃ」
少し寂しそうな表情でカリントゥ村長は私の前へやって来ると、肩を優しく叩いた。
優しいその手の温もりに、何だか心が軽くなる。
「とりあえずの情報は掴めた。いきなり押しかけてしまってすまなかったな、村長」
「その依頼主には、魔物の仕業とでも伝えてくれぬか」
「了解だ。悪徳業者が変な動きをしていたわけでもない。穏便に済ませるためにもその方がいいだろうしな」
「畑の損害賠償金はしっかり払いたい所だが……ここにはお金というものが存在しない。魔力交換でも良かったかのう?」
「ああ、大丈夫だ」
そう言って立ち上がって何の迷いもなく出口へと進むキサギに、驚きを隠せなかった。
こんな単純に終わらせてしまっていいの?
あの男の子が畑を荒らした理由すら聞いていないのに、解決したことにしていいの?
そんなモヤモヤばかりが私の心に広がっていく。
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