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その場に居座り続ける理由もなく、私は静かに立ち上がりカリントゥ村長に小さくお辞儀をして外に出た。
キサギの後を早く追いかけなきゃいけない、そう思うのにそうじゃないと自分の中で否定する気持ちが強くなる。
やって来た道をなんの迷いもなく進むキサギの姿が見えて、私はその場でキサギの名前を呼んだ。
「待って!キサギ!」
私の声に振り返ったキサギは、片手を腰に当てて何?とでも言うかの様に足を止めてくれた。
急いで慣れない梯子を降りて、待っていてくれたキサギの元へと駆け寄った。
「どうかしたのか?」
「えっと、その……これで全部解決しちゃったの?」
あまりにも呆気ない事件の終わり方に不満があるとでも言ったら、これは仕事であって感情で動くものじゃない、そう返ってきそうな気はする。
それでも納得いかないまま、これからも同じように仕事をしていくのは流石に嫌だ。
それに魔力で解決するというのもイマイチ仕組みを理解出来ていない。
「ああ。とりあえず被害が出たあの畑の持ち主には村長から魔力供給がされるから畑は元通りの形には近づくからな」
「その魔力供給って、お供え物みたいなそういう形じゃなくて?」
「魔力そのものを持っている者は、簡単に言えばお金のようにして対価を払えるんだ。ま、これはあくまでも俺たちの会社との接点がないとまず誰も知るはずもないことなんだがな。ここは俺たちとの関わりのある村でもあるから、それが通用したってことなんだ」
「あんな簡単に、終わらせてしまっていいのかな」
あまりにも淡々とキサギが説明してしまうものだから、あの少年の想いは誰も汲み取らないのかと思い知らされたような感覚になる。
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