266人が本棚に入れています
本棚に追加
こんな悲しそうな、悔しそうな顔をしている男の子に問いただすなんて辛いことは今はやめよう。
ゆっくりでいいから、心を開いてもらえればそれでいい。
「俺はマンシュ。この村の村長の孫で、一応次期村長候補なんだ」
「大きくなったら村長になるんだ。すごいね」
「すごいも何も、ただ村長の孫だからだよ。別の家に生まれていれば村長なんかにはならなかったと思う」
「じゃあマンシュくんは本当は村長にはなりたくない?」
自分が次期村長という肩書きを背負っていることに対して、あまり誇りを持っているような言い方ではない。
きっとマンシュくんの中には別のなりたい自分を持っている気がした。
「なりたくないとかそういう訳じゃないんだけど……俺は一つ絶対に叶えなきゃいけないことがあるんだ」
そういうマンシュくんの目にはしっかりとした光が宿っていて、私は何だかその光が羨ましく思えた。
まっすぐで自分のやりたいことが見つかっていていいな。
まだこっちに来たばかりで、仕事という仕事に何を目標としていけばいいのか分からないでいる。
仕事を覚えることが第一の目標なんだろうけど、ちゃんとした目標を掲げて私も仕事がしたい。
「その叶えたいお願いごと、私も聞いてもいいかな?」
ただ本当の興味本位で、その光の元が知りたくて気づいたらそう質問していた。
嫌だと言われれば、もうそれ以上ぐいぐい踏み込んで聞こうとは思わない。
ただ知りたい、私の世界を広げるためにも。
最初のコメントを投稿しよう!