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マンシュくんは一瞬、私を疑うような目を向けてくるけれど一つ息をはいてそれを止めた。
そっと静かに、でも芯のある声でマンシュくんは話し出す。
「キナっていう俺の妹の病気を治してあげたい。幼い頃からずっとずっと神木様の枝の上でただ何もすることもなく、寝たきりのまま……ずっとそこにいるんだ」
「ずっと……」
「何の病気なのかも、原因も分からないんだって。そもそもこの村は他の地域との関わりを一切持たない場所だから、ちゃんとした医者すらもいないんだ」
「それでもキナちゃんは頑張って病気と戦っているんだね」
「じっちゃんはキナの病気は治ることはない、その手段が俺たちの一族には持っていないからって、昔からずっと諦めてる。そんなのおかしいと思わない?」
身内が闘病生活を送っている中で、何もできないのは確かに辛い。
ただの風邪ですら辛そうにしているのを見るだけで、何かしらできることはないかと自然と体が動くのが普通だろう。
でも、マンシュくんはその何かをしてあげてもずっと妹の病気は良くはならないのを知っている。
「辛かったね。でも、マンシュくんも今までずっと頑張ってきたんだね」
「……うん」
自分の手では何もできていない、なんて思ってるんだろう。
何かしてあげたいという気持ちは、絶対にキナちゃんには伝わっているはずだ。
「キナちゃんの病気の原因が分かれば、私にも何かお手伝いできると思うんだ。でも……この村にはお医者さんがいないんだもんね」
「だから、その、俺が薬を作ろうとしたんだ。何でも治せる魔法の薬を」
いきなり立ち上がったマンシュくんは、ゴソゴソとポケットの中を漁り始めた。
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