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そして私の前に突き出してきたのは、畑で見たあの薬草だった。
少し乾燥させてあるのか、葉先の色が茶色くなっている。
独特な薬草の香りはどこか落ち着く香りがする。
「俺が畑に行ったのは、キナの薬を作りたかったんだ。人間の世界ではこの薬草を何でも治せる薬にするってじっちゃんが持ってた本に書いてあったんだ」
「それで畑に……」
「俺たちの村にはこんな薬草なくて、魔物である俺たちゴブリンが人間の町で薬草なんか買えるわけもないし……バレないような所でちょっとだけ貰ったつもりだったんだ。荒らそうなんて思ってやったわけじゃないんだ!!」
早口かつ長い長い言い訳を言うマンシュくんはなんと言うか、子供らしい。
でもそんな姿が可愛く見えた。
「悪いことをしてるっていう自覚はあったんだもんね」
「ごめんなさい」
素直に謝って私に頭を下げるマンシュくんを見て、私はそっと頭を撫でた。
「話してくれてありがとう。でも、もう二度とこんなことしないでね」
「うん……」
「マンシュくんが薬草を摘む理由も分かったことだし!」
私も立ち上がり、小川に向かって一つ背伸びをした。
ここからは私もマンシュくんの力になるために、色々と考えなくては。
まずは情報をキサギに伝えて、整理する必要がある。
そして、ここを拠点としてある計画を思いつく。
上手くいくかは分からないけれど、キナちゃんの病気を治してあげたい。
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