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恩送り
「大丈夫?小さい子いたら大変よね」
そう言って手を差し伸べてくれたのは、見ず知らずの初老の小柄な女性だった。私もどちらかというと小さい方だけれど、私よりひと回りは小さい。そんな小さなおばあさんが、ひとり慌てふためきオロオロしている見ず知らずの子連れの母親を助けようと声を掛けてくれたのだ。なんと親切な人だろう。
「3人も連れて、こんな大荷物。お家は近いの?」
「いえ、ここから30分ほど歩きます」
「えっ?歩いて30分!大変じゃないの」
「そうですね。でも慣れっこなんです。この上にあと2人いるんですよ。だからもうすっかりこれが普通で。でも、やっぱりだんだんと体力は落ちますね」
何だか言い訳がましくなってしまったなと、何もないところで躓いて積荷を落としたことがひどく気恥ずかしくなった。
けれどもおばあさんは目を丸くして「まぁまぁ!」と心底驚いたような感心したような声を出す。
「あなた5人もお子さんがいるの?この少子化によく貢献されてること!偉いわねぇ!」
「あ、いえ、そんな」
恥ずかしい失態を見られて、まさか褒められるとは思わなかった。小さな子どもを連れていると、さも迷惑そうにされたり邪魔者扱いされたり、嫌なことも多々ある。
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