恩送り

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特に公共交通機関では、ベビーカーなんて押していたら悪意を向けてくる人もいる。ベビーカーを使わざるを得ないこちらの事情をいちいち説明することも難しい。この少子化時代、全ての人が温かく子育て世代を見守ってくれるわけではない。むしろ我々世代にやさしくない社会だからこそ、子どもは減っていくのだろう。 「お母さんすごいねぇ!頑張ってるねぇ。あなたたちも言うこと聞いて偉いねぇ」 おばあさんはひたら感心して褒めてくれた上に、私が落とした積荷を拾って丁寧に包み直し、落ちないようにしっかりと持たせてくれた。 「本当にありがとうございます。とても助かりました!そして温かいお言葉をありがとうございます。励まされました」 深々と頭を下げると、おばあさんは慌てて私の背を起こす。 「赤ちゃん抱いてるから気をつけて!いいのよ、困った時はお互い様だもの。わたしも同じように助けてもらったことがあるから、あなたの気持ちよくわかるわ」 そう言ってにっこりと笑ったおばあさんの笑顔は、凝り固まった私の心をほぐしてくれたのだった。 「もう少しお子さんたちが大きくなって余裕ができたときに、今度はあなたが手を差し伸べてあげてね」
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