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その後、私はアパートの一室に囚われの身となっていた。とはいっても、拘束はすぐに解くことは出来るし、なんなら壁に穴でも開けて逃げ出すことも可能である。しかし、それをやってしまうと私の能力がバレかねないのでじっと我慢するしかなかった。
この部屋からの脱出を謀るべきだろうか。もし、実行するならばできるだけ能力を使った痕跡を残したくない。そう、能力を使うのは1回、それも気づかれない程度の1回だ。
天井の照明を犯人の頭上に落とすか。ダッシュで逃げて玄関のどこかを溶かして開かないようにして閉じ込めるか。いろいろ考えてはみたもののどうしても溶かした痕跡が残りそうだ。そうこう考えていると犯人の一人が私に話しかけてきた。
「俺達はこれから身を隠すことにする。当然、ここもすぐ引き払う。お前はここで解放してやるが、自分で帰れるよな」
私は小さく頷いて怯える子羊を演じた。それからすぐに私の拘束を解き、犯人達は別の車に乗り換えて走り去っていった。
残された私は、とりあえず表に出て近所の家に助けを求め、その後、警察に保護されることとなった。色々と事情聴取され、一通り終わると解放され、その日は私が住むアパートまで送ってくれた。
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