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私に返せるものはあるのでしょうか?
頼りない日の光。常に耳をつく川の音。たまに聞こえるじい様やばあ様の笑い声。外に出れば畑を耕す大人たちに気ままに遊ぶ子供たち。
僕が生まれた場所はそんな場所だ。どこそこで戦争が起こったのだの終わったのだの、僕の暮らす村には無縁のもので、身体が弱くいつも本ばかり読んでいる僕には更に無縁のものだった。
父様も母様も外に出ろとは言ったりしないのだけど、隣の家のあき姉ちゃんだけは毎日のように僕を外に引っ張り出すために訪れてくる。
「ほら!春太、本ばかり読んでないで外でみんなと遊ぶよ!」
そう言われた瞬間に縁側で読書に耽っていた僕はごろんと横になってふて寝をする。
「ふん。あき姉ちゃんと僕は違うんだよ……」
あき姉ちゃんは生まれたときに人物鑑定の先生に世界を救うかも知れない神童と言われて、百歳まで生きると言われたそうだ。
それに比べて僕は大人になれない弱き子だと人物鑑定の先生に言われた。
僕の村では生まれた赤子は必ず人物鑑定をされるのだけど、そこでもう人生は決まってしまう。
大人たちは盲信的に信じるものだから、あき姉ちゃんみたいに将来有望なものには優しく、僕みたいに将来のないものには辛くあたる。
そんな僕の気持ちをあき姉ちゃんなんかに分かるものか。
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