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晩御飯の時間になっても二人が出てこない。 柳ヶ瀬も木蓮もテラスでただ二人を待つことしかできない。 先ほど、準備が出来たことを知らせに行こうと互いの部屋を訪ねたところ、 芙蓉の部屋には主不在だし、しかも蜜廊下へのドアは開きっぱなしだし、 そしてなおかつ、明慶の寝室へのドアもフルオープンだったしで・・・ 「どうしてあの二人のそういう声を聴かなきゃならないのよ・・・  恥ずかしくてどうやって芙蓉様を見たらいいの?」 「いや、俺も聞きたくなかったよ。明慶様の腰遣いがわかるようなベッドの  軋み音・・・。」 柳ヶ瀬夫妻にバッチリと濃密な時間が見られていたのだった。 せめてドアは締めてからにしてほしいと、心から願った二人だった。 暫く待ってみて、それでも出てこないなら、食事は部屋まで届けようという事になったのだが・・・。 もうそろそろ大丈夫かドアをノックしたのだが一向に返事がなかったため、こうやっていまだ待機しているのだ。 誰でもが将軍や正妻の側に行けるわけではない為、こうやって待つしかない。 「明慶様って・・・絶対しつこいと思うわ。」 木蓮の口からズバッと一言が飛び出た。 柳ヶ瀬もその意見には反論できない、なんせとんでもない年数片思いしてきたのだから、堪り溜まっているものがあっても仕方ないし、明慶は今まで交わる経験をしたことがなかった。 そんな生真面目明慶が、大人の快感を覚えてしまったらエンドレスリピートしちゃうだろう・・・。それが男ってもんだ。 「―――せめて気持ちが止まらない・・・とかにしてくれ。」 「止める気がないだけよ。」 あぁ、俺の妻は何って気持ちのいい毒を吐くんだろう・・・と柳ヶ瀬は木蓮の自分好みの口調に惚れ惚れしていた。 テラスで夫婦は食事を済ませ、コーヒーを飲みながら時間を潰していた。 2人は最初から会話の内容も合って、話が途切れる様な事がなかったため、こうやって時間が過ぎていく事も全然苦ではなかった。 柳ヶ瀬がふと時計を見ると、一度目の訪問から既に2時間が過ぎていた。 流石に体力と、出せるものも底が付いただろうと思い、席を立つ。 「―――終わったんですか?」 木蓮もカップを置き、席から腰を上げる。 「んー、なんとも言えない。普通ならもう終わっててもおかしくないけど  明慶様は違うからな・・・。よし、内線しよう。」 最初からその手を使えば自分達は聞かなくていいものを聞かずに済んだのではないだろうかと、木蓮は夫をジト目で見た。 「―――えぇ、はい。はい、わかりました。あ、あと、ドアしめてください。  えぇ、はぁ?自己責任でしょうが!バカなんですか?」 夫のあの反応からすると、恐らく、芙蓉の声を聴くとは許せん!とか言ってるんだろうな。木蓮は何となくそう思った。 「どうでした?食事運びますか?」 戻って来た柳ヶ瀬に声を掛ける木蓮、その夫の呆れた表情からして多分さっきの予想は当たっているのだろう。 「芙蓉様の声を聴くなんて減給ものだ!とかぬかしやがった。」 おしいっ!そっちかぁ・・・。 できれば完璧に当てたい明慶の分かりやすい文句。 「まあ、そうおっしゃるでしょうね。ではお運びしたしましょう。」 木蓮は笑いたいところをぐっとこらえて、膳の用意を始めた。  
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