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近づいてくる就任式は周りの騒々しさでどれだけの事なのか理解できる。
とは言え、想像していたものよりも遥かに大変であることが身をもって分かった。
毎日の様に肌の手入れをされ、健康チェックも厳しい。
どんなものも見逃してはならないという明慶のお達しをきっちりと守る部下たちに、ハッキリ言って芙蓉達は息がつまりそうだった。
体重の変化には特に厳しくチェックされて、その被害は木蓮と真絹にまで及んでいる。
木蓮も真絹も芙蓉と同じく壇上に上がる事になっているので、そのために同じように厳しく管理されているのだ。
「ねぇ、おかしくない?わたし達ってそんなに関係ないでしょ?」
流石にこの一週間、毎日厳しい管理の下で生活してきてイライラも限界に近づいてきている木蓮。
そもそも彼女は誰かに拘束されたりすることを極端に嫌がる性格だった。
真絹もお腹に子供がいるとはいえ、間食の制限がなされて、毎日竜聖に八つ当たりを繰り返しているのだという。
「か、関係ないって事はないよ。むしろメチャクチャ関係してるって。」
芙蓉は木蓮の言葉に反論する。気持ちはわかるけれども、そんな言い方あまりにも寂しい。
「ちーがーうー!体重管理とかそういう事よ。わたしもまきにいも脇にいる
だけなのに、どうしてこんなに管理されなきゃならないの?」
真絹は食べたいものを食べさせてもらえないストレスでぐったりとしている。
いや、食べていない訳ではない。ただまめにしていたお茶の時間と回数が相当制限されてしまったのだ。
ストレスは妊婦にとって敵だ!と竜聖は言っていたが真絹は頑張って耐えていた。
「木蓮・・・仕方ないから。あとちょっとだから・・・。芙蓉に文句言っても
仕方のない事なんだから・・・ね。」
自分の事を庇ってくれているのだろうが、全く力が入っていない。
遠くを見てしかもうっすらとなみだぐんでいるようだった。
そんなにおやつの時間が楽しみだったなんて、思いもしなかった。
「まきにい・・・ごめんね。僕につき合わせちゃって。」
どうして自分が謝っているのか、芙蓉にも理解はできない。
でも、真絹のこんな姿をみたらば、言ってしまいたくなるのが人情だ。
真絹は芙蓉の方を見て、儚げに微笑むとまたぐったりしてしまった。
就任式がこんなにも大変で苦行だとは思わなかった3人だった。
「ところでさ、お部屋様方はどうなるのかしらね?というか、メチャクチャ
大人しくなって気持ち悪いんだけどさ。」
木蓮は会話を変えるべく、自分も気になっている事を話題にした。
そう、就任式が終わってしまったら、正式に彼女たちには通達が行く。
ここに残って側室として迎えられるもの、そうでなければ家に帰されて、また一から結婚に向けての相手探しを始めなければならない。
そもそも、家柄もよく見目にも問題ないため相手にはそう苦労もしないだろう
だが、中には本気で3人のうちの誰かに恋している人もいる。
明慶の側室にはなれなくとも、竜聖や柳ヶ瀬の側室になりたいと思うものだっているのだ。
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