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 柳ヶ瀬たちの姿を確認するとその子供は慌ててどこかに行こうとする。  だが、完全に迷子になっているのだ、半べそをかいてあっちにふらふふら  こっちにふらふらと、もはや収集のつかない動きとなっていた。  「どうしたんだ?迷子になったのか?なんだお前、白拍子なのか?   可愛いな、良く似合ってるじゃないか。ほら、泣くな、綺麗な化粧が崩れるぞ?」  柳ヶ瀬よりも早く、明慶はその子供の元へと向かっていた。  身元がはっきりしていないものを、簡単に近寄らせてはならないのに。  「あ、明慶様っ!御放し下さいっ!その子供はわたくしが保護します!」  柳ヶ瀬は慌てて明慶から子供を取り上げようとした。  子供であっても油断してはならない、暗殺者の中には鍛えられた子供も含まれる。    「――柳ヶ瀬っ!落ち着け。お前がそんな大声を出したらこの子が怯えてしまう。   ・・・すまなかったな、大丈夫だ。怖くないぞ?な?」  わが身よりも子供の不安を先に案じることが出来る男、それが明慶だ。  いつもは凝り固まった表情筋も、自然と柔らかく、優しいものだった。  柳ヶ瀬ですら、見たことがなかった優しい表情。  明慶に抱かれ、目に溢れんばかりの涙を溜めたその子供は、子供であっても  圧倒的な美しさを纏っていた。  シルバーグレーの瞳は涙を真珠に変えてしまったかのようだ。  明慶も柳ヶ瀬もその子供が纏う美しさに、身動きが取れなくなってしまった。  魅了する、とはよく言ったもので、空間全部がまるで切り取られてしまったみたいに  呼吸音も、ざわめきも、何もかも聞こえなくなってしまっていた。  
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