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「ぼ、僕、おトイレに行きたかったの・・・グスッ、う、でも、う、うっ。」
子供の声は鈴がコロコロと鳴るような可愛らしいもので、軽くパニックになっていた
様子で、うまく言葉が紡げないようだ。
仕草、表情、声、全てに神経を奪われていた男2人は、子供の言葉にやっと我に返り
「そ、そうなのか。分かった、俺も丁度トイレに行くところだったんだ。お前が
嫌でなければ一緒に行こうか。」
明慶は抱き上げた子供の顔を除き、しっかりと視線を合わせ、自分は攻撃しないと
相手に安心感を与えようとしていた。
「ほ、ほんと?い、いいの?」
大粒の真珠のような涙を、小さな手で拭いながら問いかけながらも懇願するような
表情で子供は尋ねる。
バース性判別はまだ分からないが、この子はきっとオメガだろう。
柳ヶ瀬はなんとなくだが彼のバース性を悟っていた。
極上のオメガはやはり幼い頃からなんらかの雰囲気を醸し出している。
それをキャッチできるかどうかは、対峙したアルファのみ、しかもかなり優秀な
アルファしか感じない。
先ほどから優しく丁寧な仕草で子供と向き合っている明慶も本能で感じ取っている
のであろう、身体が幾分緊張しているようだった。
もし仮にもこの子供がアルファだとしたら、それはそれはこの先とんでもない
化け物のようなとびっきりのアルファに成長するだろう。
「―――君の名前を教えてくれるかい?」
念のためだ、少しの情報は得ていても問題はない。
柳ヶ瀬はそう思い、子供に優しく問いかけた
「―――――青葉。」
にっこりとほほ笑みながら応えるその子供に、明慶は胸の内がざわつくのを感じた。
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