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 青葉と言ったあの子供は、すぐに家の人が探しに来てくれた。  無邪気にこちらに手を振る姿は今だ焼き付いて離れない。  ただ手を振るという簡単な仕草ですら、美しいものに見えてしまうほどだったから。  「明慶様、彼は花の名を与えられています。意味はわかりますよね?バカじゃないん   だから。」   当時を思い出し、幼かった彼の事を思い出す。あの後から明慶はずっと熱に浮かされて  片時も彼の事を忘れたことがなかった。  白拍子として本格的に舞うと聞いた時は、お忍びで鑑賞しにも行っている。    将軍家の血を引いているトップアルファが隠れてコソコソと鑑賞するなど  情けなくて涙が出そうになったのを、柳ヶ瀬は忘れもしない。    「――――わかってる。・・・わかってるよ。」  睡蓮で花の名を与えられているという事は、将軍が選ばなかった場合、次のクラスの  アルファに娶られてしまうとうことだ。  優秀なオメガから産まれる子供の期待値は相当高い。  ただ、彼が、芙蓉が運命の番でなく、他のオメガが明慶の運命の番だとしたら  ずっと大切にしてきた恋心は捨ててしまわなければならなくなる。  芙蓉のような優秀なオメガを側室として留めておくことなどできはしない。  しかも、明慶は側室を持つことを強く拒んでいる。  
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