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真絹の後に竜聖が一緒になって現れた時は心臓が止まるかと思った。 特に自分達が悪い事をした覚えはないのだが、この状況を見て、言い訳を聞いてもらえるのだろうか・・・。 明慶は顔面から血の気が去っていく感覚をしっかりと感じていた。 一方、廊下での濃密な時間の事などなかったように現れた夫婦は目の前の 現状に頭の回転が追い付かなくっていた。 「ふ、芙蓉?一体どうしたのです?何を泣いているんですか?」 戻って来た真絹の目に真っ先に飛び込んできたのは、おでこを床に付けるほど 深く深くお辞儀をしながら、背中が小刻みに揺れて、籠ってはいるがしゃくりあげて泣いている声が聞こえてきている状態の芙蓉だった。 「りゅ、千階時(せんがいじ)さん。お越しになっていたんですか・・・。」 茫然となっている2人に慌てて声を掛ける柳ヶ瀬。 しかし、竜聖は既にとんでもなく恐ろしい表情になっており、この先の展開を 想像するのが怖い。 「―――次期将軍、明慶殿。1つ訪ねたい事がある。」 竜聖の法廷で聞くような厳しい声に、明慶も、柳ヶ瀬も身体をビクつかせた。 「こちらのオメガ、芙蓉はここでは花の名を与えられるほど優秀なのだが…  その彼に一体どうしてこんな格好をさせているのかお応え頂きたい。  返答次第では・・・・おわかりになりますね?」 「ちっ、ちがっ、違うんだ。これは誤解なのだ!千階時、良く聞くんだ。  これは俺が望んだことではない!酒がこぼれて、彼が謝ってきたから  微笑もうとしたら泣いてしまって、さっきからこのままで困っていたんだ!  微笑んでも微笑んでも泣き止んでくれないんだっ!!」 ―――なるほど、合点がいった。 竜聖は明慶の顔を見ると大きく舌打ちして、芙蓉へと歩み寄る。 真絹も一緒に歩み寄り、そっと彼を起こしてやった。 「さぁ、芙蓉大丈夫ですよ。涙を拭きなさい、こんなに泣いて・・・  美しい顔が台無しではありませんか、ごめんなさい、貴方を1人に  してしまって、不安になったでしょう。木蓮は大丈夫ですからね。」 細く小さな肩を優しくさすりながら、安心させるように話す真絹。 芙蓉も、うん、うんと頷きながら少しずつ落ち着きを取り戻し始めた。
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