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明慶と柳ヶ瀬はお互いに顔を見合って、助かった・・・とため息を吐いた。 竜聖に責められると、何も悪い事はしていないはずなのに、物凄く悪い事を している気分になってしまう。 これは昔からそうだったのだが、いまだにその習慣みたいなものはなくならない。 「――お前の顔が怖いんだっての!微笑むなっ!そんな高等技術お前に使える  わけがないだろうが!柳ヶ瀬が傍にいるのに何故止めないんだ!よく見ろ  この顔面脅迫機を、微笑むなんてしたら、悪魔の前に差し出された餌の様な  気分を味わう羽目になるだろうが!!」 酷い言われようである、確かに自分の表情が硬く誤解されやすという事を理解しているが、ここまでこんなにぼろくそに言われるなんて・・・。 明慶はまた落ち込んでいった、芙蓉が泣き止んでくれなかった事も、顔をいつまでたっても上げてくれなかったことも、明慶をどんどん落ち込ませていく原因になっている。 当の芙蓉は、なんとか落ち着きを取り戻したのだが、泣きつかれてしまったのか、伏し目がちでぼーっとしている。 まるで拗ねているかのように見えるその姿もまた可愛らしく、明慶にはたまらないショットとなっていた。 「竜聖、言い過ぎです。明慶様は明慶様なりに、芙蓉を元気づけようと頑張っ  て下さったのです。そんな言い方ダメです。さ、芙蓉も泣き止んだのなら  もう1度お酌をし直してきなさい、折角いらしてくださったのです。」 真絹に諭され、おずおずと明慶に近づいてくる芙蓉。 だが先ほどの事がまだ気になるのか、顔を上げる事はなかった。
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