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「木蓮のフェロモンに合致したアルファの方は・・・柳ヶ瀬様です。」
瞬間、時間が止まったように感じた。
真絹の口からでた名前は自分ではなく、柳ヶ瀬だったのだ。
「―――やはり、わたくし・・・ですか。」
柳ヶ瀬本人も薄々わかっていたのだろう、すんなりと現実を受け止めているようだった。
「しかし・・・あんなに美しく可憐な方をわたくしの番にしてもいいのでしょ
うか?優秀な方であるし、もっと重鎮の方の所に嫁がれた方が幸せなのでは
ないでしょうか?」
芙蓉は柳ヶ瀬の言葉を聞いて、思わず吹き出してしまった。
今まで唇を尖らせ拗ねたようにしていた芙蓉が笑いだすなど、びっくりしてしまう。
「ご、ごめんなさい。ふふっ、木蓮が可憐って、ふふっ、ごめっ、ごめんなさ
い、木蓮は可憐ですが可憐ではございません。彼女は皆さんが思っている
よりはるかに賢く、遥かに度量が大きい。僕たちオメガにとって運命の番っ
て言葉はアルファの皆さんが思うより遥かに重く、深い意味を持っています
だからどうか、木蓮を幸せにしてください、お願いいたします。」
深々と頭を下げ、柳ヶ瀬に頼む姿は、ともに暮らしてきた姉弟を幸せにしてほしいと、懇願してるようだった。
「―――あ、頭を上げて下さい!わたくしにそんな事なさらないでください
芙蓉さん、わかりましたから。最初から断るつもりなんてなかったんです
一目会った時からもう、彼女の事が気になって仕方なかったんです!」
木蓮の居ないこの場で、柳ヶ瀬は盛大な告白をしていた。
聞いているこちらが恥ずかしくなるほど熱く語られてしまった。
その声はきっと離れにまで届いている事だろう・・・。
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