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「明慶様、実は、芙蓉はまだきちんとした発情期を迎えたことがございません
元々薬が良く効く体質なのでしょう、ここにきても皆が起こすような強い
発情を見たことがないのです。1度もしかしたら?という事がございまして
その時のフェロモンのデータを見てみると、型は合致いたします。」
真絹の話を聞いているのだが、ぼんやりとしか耳に入ってこない。
ずっと想ってきた相手は自分の運命だと知った明慶にはその事実だけで良かったのだ。
「ならば、その結果をいただければいい。俺はそれでいい。芙蓉を…
芙蓉を俺の妻に迎えたい。」
明慶は俯いたままの芙蓉にしっかりと自分の意思を伝えた。
彼の言葉を聞いた芙蓉は漸く顔を上げて自分を妻に迎えたいという男の顔を見た。
「――――明慶様、僕はそう言われたならば断わる事はできません。それが
この国の決まりで、僕たちオメガの運命ですから。」
芙蓉の言葉に明慶は胸が痛んだ、つまりは恋だのなんだの感情関係なしで自分たちの運命は決まっていると、逆らうことなど出来ないと嘆いているように聞こえたからだ。
「ただ、お願いがございます。」
妻になる者の願いなどいくらでもかなえてやりたい、特に芙蓉ならどんなこともかなえてやりたい。明慶は当然そのお願いの内容を聞く。
「側室をお迎えください。」
芙蓉の口から出た言葉は、明慶にはあまりにもキツイ一言だった。
明慶は側室はとらないと決めていた、その事はこの睡蓮にも通達されている
「お、俺は側室はとらない!妻はたった一人でいい!!守るべき番は、愛する
べき番は生涯たった一人だと決めている!!」
苦しかった、切なかった、容易に会いに行けない身分になっても、遠くからしか見る事が出来なくても、ずっと芙蓉だけを想ってきた。
その想い人が自分の運命だとわかったのに、残酷にもその相手からは他に誰かを迎えろと言われる。
明慶は絶望と切なさのあまり、眩暈を起こしそうになってしまう。
―――違う、違うっ!運命だからお前を妻にしたいのではない!
恋焦がれたお前が運命だっただけの話なんだっ!!
上手く伝わらない、伝えられない自分の想いに明慶は苛立ちさえ覚えた。
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