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今日はここで一泊する予定になっていた、相手が見つかれば番関係を結んでしまう事のほうがよいからだ。
明慶の為に用意された部屋は、代々の将軍が過ごしてきた睡蓮のビップルームであった。
夜着に着替えた芙蓉と同じく着替えた明慶はだだっ広い部屋にそれぞれが離れて座っていた。
さっきまでの会話から、どうやって仲良くイチャイチャ過ごせというのだ。
互いに気まずい雰囲気の中、芙蓉が酒と小鉢の並んでいる盆を持ってきた。
「明慶様、どうぞ、酔いも醒めてしまったでしょうし如何ですか?」
膳を勧めているだけの仕草なのに、彼がするとどうしてこんなに妖艶で色気があるのだろうか…。贔屓目で見ているとはいっても、それでも余りある色気だと明慶は思う。
相手と同室になった時点で、抑制剤の投与は止められる。
故に先ほどから明慶の身体はじんわりと火照りだしているのだが、相手の芙蓉は全くなんの変化もないようだった。
「そうだな、うん、頂こう。これもここの地酒なのか?」
膨れ上がってしまいそうになる男としての本能を抑え込むために、明慶は膳に並べられた物の説明を促す。
「左様でございます、こちらは先ほどまでの酒とは違い、年数ものです。
明慶様はお酒にお強いようなのでこちらもいけるのではと思い、用意させて
頂きました。小鉢は…恥ずかしながら僕の手作りでございます。」
並べられている小鉢を見ると、丁寧に作られている事がわかる。
しかもそれが芙蓉の手作りと聞いて舞い上がらない訳がない。
豚の角煮、ほうれん草と菜の花の和え物、出汁巻き卵、一口大に切られた焼き魚など、明慶の好みに沿った食べ物が並んでいる。
「芙蓉は料理も得意なんだな、どれも美味そうだ!俺は卵焼きが大好きでな
これがあればもう幸せなんだ。」
出汁巻き卵をほお張りながら嬉しそうに語る明慶を見て、芙蓉はほんのり頬を染めながら柔らかく微笑む。
芙蓉の作った出汁巻き卵は、出汁の香りがふんわりと漂い、フワフワの食感でほんの少しだけ甘みがある。
「んまいっ!俺の大好きな味だ!!」
小鉢をほめられて恥ずかしいそうに酌をする芙蓉を見て、明慶は思った。
やはり側室など迎えたくないと、自分が愛するのは芙蓉だけだと。
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