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木蓮が持ってくる本は、月刊なかま 月刊スリーピン 月刊チュリーップ 月刊ちゃま など多種多様な月刊誌だった。 自分達の母親世代の本まで引っ張り出してくる始末で、読むのが大変だった。 時代によって様々な恋愛の仕方があって、芙蓉はモジモジする恋愛の話が好きだった。 対して木蓮は、思いっきり淫らな恋愛がお好みで、芙蓉が好きな話にはいつも”ちゃっちゃとやっちゃいなさいよっ!”と、身も蓋もない事を言っていた。 男子の心も知らねばと、月刊ジャンボ 月刊マガヒト 月刊キング なども取り寄せ男心というものも勉強していた。 どうしたって睡蓮に居る限り、自由に恋愛などはできないのだからいざという時の為に頭には詰め込んでおかなければならない。 身体は真っ新ピンでも、知識だけは百戦錬磨!この言葉を木蓮は毎回言うのだった。 だから、今明慶の唇が自分の唇と重なり、艶めかしく動く舌が、明慶の指の動きが、吐息が・・・・。 まるで読んできた月刊誌がお子様のものだったのではないかと思うくらいに淫らで、厭らしく、艶めかしい事が怖いのだ。 本の中ではこうなったら身を委ねるだけ・・・となっていく展開なのだが、何もかも初めての芙蓉の身体は緊張のあまり、ガッチガチに固まってしまっている。自分でも情けないほどに小刻みに震える指先は冷たくなって、色を失ってしまっていた。 僕は肝心な時にどうして頑張れないんだろう、この人にだったら自分をささげてもいいと、思ったじゃないか! 睡蓮の門が開き、明慶たちが入ってきた時、明慶の顔を見て自分の身体に電気のようなものが走った時の事を思い出す。 あぁ、この人が僕を番にしてくれるんだな。直感でわかった自分の運命。 驚くほどにすんなりと飲み込めて、この短時間ではあるが明慶の人柄の良さも 分かって来た。 なのに・・・今はこの先の事が怖くて仕方がない。 芙蓉は自分の根性のなさに思わず涙ぐんでしまう。
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