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顔に当たる日差しが思いのほかギラギラとしているのは気のせいだろうか。
目を開けなくてはならないと思っているのに、開ける気力がない。
昨日はそんなに飲んでいないし、そもそも酔っぱらったりしない。
「・・・・うぅんっ、明慶様、明慶様?もうお昼でございます。」
ドアから遠慮がちに声を掛けてくるのは、昨日木蓮をお持ち帰りした柳ヶ瀬だった。
「―――――あ゛あ゛ぁ。起きてますよ。」
思った以上に濁った声が出てしまった、芙蓉はこの声で起きてしまったのだろうか、と心配になった。
もし起きた時に自分の腕の中から消えてしまっていたらどうしようと不安になっていたのだが、目が覚めた時、温かい感触が腕に中にあってほっとしていた。
長い睫毛がフルフルと震え、何か夢でもみているのだろうか・・・。
甘える様に自分の胸にすり寄って眠っている姿は、間違いなく天使そのもの
明慶は、飽きることなくジッと芙蓉の寝顔を見つめていた。
「―――おい、起きろ変態。」
つかの間の平穏ってきっとこういう事をいうんだろうな。
変態ってなんだ、愛でているといって欲しい。
「だから、起きてるってば。大きな声出すんじゃない、起きちゃうだろ?」
見下ろしてくるのは自分の部下のはずなのだが、もはや雰囲気が部下ではなくまるで上司のような柳ヶ瀬。
「昼まで寝てるって、あなたどんだけの事したんですか?呆れますね。」
――――何もしていません、チューだけで満足しました。
なんて言ったら、また根性ナシとか、バカなのか?とか言われるんだろうなぁ
明慶は柳ヶ瀬に視線だけでこの気持ちを送った。
届けっ!俺の想い!君に届けっ!この切なかった昨日の想い!!
「何見てるんでか、しかもなんか念がこもったような視線やめろ。」
きっと君には永遠に届かないな・・・俺の想いは。
柳ヶ瀬は心なしかすっきりとした表情になっている、何があったかは聞かないし、聞いたら自分が虚しくなるだけだから聞かない。
恐らく、いや、間違いなく番関係を結んだのだろう。
確か竜聖が真絹を番にしたときもこんな顔をしていた気がする。
明慶はただ1人置いてけぼりにされてしまったような気分になってしまい、悲しくなってきた。
だが、泣いている芙蓉に無理やりするのは紳士として反する行為だと思っているし、バイブルにもそう書いてあったから自分のしたことは間違っていない!
と、強く思う明慶だった。
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