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「いえ、芙蓉さんのせいではありませんから。ぜ ん ぶ !明慶様の責任。  さぁ、広間へ行きましょう。妻が待っていますから。」 柳ヶ瀬は笑顔で芙蓉の手を取り、布団から起き上がらせると洗面所の方へと彼をエスコートしていった。 洗面所に向かう芙蓉の後姿を見ている明慶は、薄い夜着から見える彼のお尻の形がこれまた可愛いのだと知り、その目に焼き付けていた。 連れていかれてしまった芙蓉の残り香がまだ明慶の身体から香ってくる。 なんとも表現しがたいいい香りなのだ。 スンスンと鼻を鳴らし、自分の腕や胸から香ってくる芙蓉にうっとりとしていると、 「・・・まだ出したりないんですか?モンスターですね。」 エスコートし終わった柳ヶ瀬がいつの間にか戻ってきていて、今の明慶の一連の行動をしっかりと目視していたらしい。 呆れたように言われ、指さされたそこは、ミニアキちゃんがニョッキリと起き上がりお山が出来ていた。 「い、いやぁ、ほらまだ朝のおトイレ行ってないから!出したらしぼむ。」 ホントは何にも一滴も出していないのです、ガマン汁は含まれませんよね? 言うに言えない明慶は心の中でそう呟いて、トイレへと駆け込んだ。 その姿を柳ヶ瀬は大きなため息で見送っている。 明慶にはこのため息が呆れたようなモノに聞こえたかも知れないが、実際は安堵の溜息であった。 明慶様にもちゃんと運命の番が現れてくれた、しかもその相手はずっと想ってきた芙蓉だというではないか。 こんなに嬉しい事はなかった、自分の番が見つかった事も嬉しかったのだが、 やはり君主の番が見つかったことに比べたら、比較できない。 一番近くでいつも見守って来ただけに、明慶の芙蓉に対する気持ちが並々ならぬものだという事はわかっている。 諸外国の重鎮、皇族からの再三の求婚も撥ね付け、誰にも媚びず、誰にも靡かないと言われていた芙蓉。 そんな彼が、明慶の動作、仕草に敏感に反応し、顔色をうかがいながら一生懸命接してくれている。 ”将軍”という肩書があるからかもしれないが、一緒に時間を過ごしていけば必ずわかるはずだ、明慶様の本当の心が。 柳ヶ瀬は城に戻ったらすぐに奥の整理をしなければならないなと考えていた。 芙蓉を迎えるために、彼に安全に過ごしてもらうための準備を徹底的にしなければならない。 どんな事があっても、守らなければならない、と。
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