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「ありがとう、今は落ち着いてるわ。それに・・・。もう、ね、あの」 口ごもる木蓮の様子を見てふと気が付いたことがあった。 彼女に首にはもうチョーカーが付けられてはいなかったからだ。 「――あ、番に・・・?」 遅かれ早かれ自分の身にも起こる事なのだけど、芙蓉はとても驚いていた。 昨日までは同じように首元にあったチョーカーが無くなっているのだ。 見慣れていたものがなくなっていると、物凄い違和感を感じてしまう。 「うん、柳ヶ瀬様が大事にしてくれるって・・・。」 頬を染め少し俯き加減で話す木蓮は、しとやかな華そのものだ。 ”花”同士、慰め合い励まし合い、ここでの時間を過ごしてきた 芙蓉は、嬉しさと離れて行ってしまう寂しさに急に包まれてしまい、涙が止まらなくなってしまった。 「おめっ、ふっ、うぅ、おめでとう!うっ、グスっ」 ポロポロと零れてくる大粒の涙を、木蓮の小さな手が優しく拭ってくれる。 もう、こうやって当たり前の様にしていた事もできなくなるのだ。 「ありがとう、芙蓉。私達、幸せになろうね。」 うん、うんと頷きながら抱擁しあう2人を、明慶は優しい目で見ていた。 「明慶様、あまり僕の妻を怖い顔で見ないでいただけます?」 後ろからニョッキリと現れた柳ヶ瀬が酷い一言を放つ。 別ににらんでなどいなかったし、むしろ美しい光景に微笑んでいただけだというのに。 「なんっ!全然怖くないだろう!この優しい微笑みが伝わらないのか?」 「いえ、全く。そんな眉間に皺寄せて、視線だけで命を奪う気ですか?」 眉間に皺が寄っているはずなんてない、だって微笑んでいるのだから。 明慶は、いつも持ち歩いている笑顔チェック用の手鏡を持ち出し、今の微笑みをもう一度やってみる。 ―――鬼瓦みたいな笑顔だった。
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