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バタバタな昼食の時間が終わり、やっと本題に入る時間ができた。
「芙蓉様、木蓮はこのまま奥に入られる、という事でよろしいですね?」
真絹が最終の確認をする。
今ここには、明慶夫妻、柳ヶ瀬夫妻、各省庁の大臣などが集まっている。
真絹は睡蓮の責任者であるため当然同席している。
流石にこの国の大事を扱っているだけの事はある、ピンとした空気が張り巡らされ、芙蓉も木蓮も居心地が悪い。
そして何故か竜聖までここにいるのだが、もう誰も何も突っ込んだりはしない
「芙蓉様は白拍子の家系ですので、臨時の後継ぎを選ばなければなりません。
お世継ぎがもし、睡蓮に来ることがあればそのまま継いでいただく事に
なります。」
長い長い歴史の中で絶やすことなく受け継がれてきた舞の技術。
明慶の元に嫁ぐことがなく、別の所に嫁いでいたとするなら、その家は舞の総本家として扱われることになっていただろう。
国事、国賓、その他の諸々とした大きな行事には必ず芙蓉が舞を行っていた。
だが、正妻として迎えられる以上もう芙蓉が国事等で舞を舞う事はない。
その代わりを務める者を門下のなかから選ばなくてはならないのだ。
既に広間には門下生が集められており、きちんと整列して誰が臨時の後継ぎになるのかを待っていた。
「芙蓉、こればかりは俺たちにはわからない。君が指名してくれないか?」
明慶に言われ、芙蓉はしずしずと前に出る。
今まではともに舞を舞っていた仲間なのだが、一段高い所にいるだけで景色が全く違うものに見えた。
臨時でも選ばれた者は、”花”を与えられるチャンスが大きくなる。
評判が良ければトップアルファ達がこぞって気を惹こうと、高価な贈り物や足しげく通ったり、簡単にはいけないパーティーへの招待など、他のオメガが欲する特権が勝手に転がり込んでくる。
欲のない人間など稀である。
皆、隣の人間よりもちょっとでもいい所へ行きたいのだ。
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