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「実は僕の中で候補は4人ほどいるんです、今すぐに決めろと言われても…  それぞれが、それぞれにいい所と足りない所がありますから、もう少しだけ  時間を頂けないでしょうか?」 芙蓉は最前列に並んでいる4人を見て言った。 1人目は――若葉(わかば) 男オメガで黒髪、黒のひとみ、華奢で小さなイメージのオメガには珍しく高身長で、長い手足の動きは見た者を魅了する。 2人目は――露草(つゆくさ) 女オメガでダークブラウンの髪に、同じ色のひとみ。感情のコントロールが上手くできず、気持ちが乗っている時の舞は波紋の様に心に広がる感動を与えるが、乗っていないときは観客をげんなりさせるほど荒い。 3人目は――紅葉(もみじ) 男オメガで名前の通り赤い髪に、同じ色のひとみ、浅黒い肌で顔立ちはこの中では抜きんでて美しい。野心家で見返りがないと望むような舞をしない。 情熱的な舞をし、見る者の心を熱くさせるのだが、見返り次第。 4人目は――若草(わかくさ) 女オメガで黒髪、黒いひとみ、4人のなかで一番年下であるが、舞に対する気持ちは誰よりも強く真面目である。柔らかさが足りず、艶のある舞が出来ない ただ実直な舞は見る者の初心を思い出させ、彼女の舞は気持ちが洗われると言われている。 4人とも芙蓉の舞に比べたら全然足元にも及ばないのだが、300人ほどいる門下生の中では優秀で、将来性もあった。 芙蓉は壇上からおり、4人の元へと近づく。 「これから皆には、それぞれの舞を踊っていただきます。その内容は自由です  今すぐではないですし、1人、1人、時間をかけて見させていただくので、  お城まで足を運んでいただく事になります。申し訳ありません。」 芙蓉は面倒な事をさせてしまう事に申し訳なさを感じ、深々と頭を下げお願いすることにした、だが頭を下げた一瞬、自分の頭部に突き刺さるような敵意剥き出しの視線を感じ、慌てて頭を上げた。 明らかに敵意があった視線、何処から、誰から向けられたものなのかわからずキョロキョロと見まわしていると 「芙蓉、どうかしたのか?」 芙蓉の様子がおかしいとわかり、明慶が壇上から降りて、彼のすぐ隣へと足を運んできた。
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