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明慶は自分が起こした行動がどんな意味を持つのかあまり理解できていなかった。と、言うのも自分の妻を守るために必死になってしまった為、自分の持つ肩書の意味を忘れてしまったのだ。 もともと、肩書や性のたいして偏見も何もなく、皆が平等であるべきだと考えている明慶にはここにいるオメガ達の狡猾な想いなど理解できないのだ。 ”他人を信用すことは決して悪いことではない、ただ、時に人は簡単に裏切るし、心とは見えないものだから信用し過ぎてはならない。” そう、父親から教わってはいるのだが、いまいちピンとこない。 大体、明慶の顔が怖いため滅多に人が寄ってこないということもあった。 ぼーっと、礼をしているオメガ達を見つめる芙蓉に明慶は声を掛けた。 何度も見ているが、彼はよくこうやって人を見ているのか、それともなにか違うものを見ているのか・・・どこか遠くを見ているようなときがある。 「芙蓉、大丈夫か?少し顔色が悪いようだけど・・・。」 そう問われた彼は、少し悲し気な視線を明慶に向け、すぐに取り繕った様な笑顔で応えた。 「―――はい、大丈夫です。申し訳ございません、明慶様にここまで降りて  来て頂くなど、失礼をいたしました。」 甘い華のような香りが今は憂いを帯びた悲し気な香りに感じてしまうのは自分の気のせいなのだろうか。 夫婦になる事を決めてから大した時間もたっていないが、彼がいつ自分に心を開いてくれるのか、明慶は自分の度量の小ささを感じていた。 ――――運命なら従うだけ。 芙蓉はそう言っていた、つまり望んでこうなった訳ではない。 自分と芙蓉とではスタートが違う、恋焦がれて漸く手に入れることが出来た自分と、いきなり運命だからと突き付けられた現実。 明慶はただそこに立ってぼーっと景色を見ている芙蓉をそっと抱きしめた。 こんな大勢の前でこんな事をするなんて、ホントは良くないとわかってはいたが、わかって欲しかった。 自分がどれほど芙蓉を欲していて、彼だけが自分の愛する人なのだと。
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